|2008.11.04 / Flip
手書き文字。スロウ系や暮らし系、お洒落写真誌などでもよくみかけますよね。四角四面なグリッドな世界が、ちょっと柔らかくなったりユルくなったりと、デジタルに支配されたグラフィックデザインにおける、膝の上のネコな感覚はやっぱりマウス握るよりペンを握りたいと思わせます。
そんな手書き文字の金字塔と言えば「暮しの手帖」花森安治かと個人的に思うのですが、そんな花森安治が影響を受け、憧れ真似したといわれるのが、古本好きには有名な存在である、戦後一世を風靡した洋画家・佐野繁次郎。
実際、花森安治は佐野のもとで働いていた過去もあり、佐野なくしては、あの「暮しの手帖」な世界もちょっと違っていたのかも。
そんな佐野繁次郎が手がけた膨大な数の装幀を集めた本「佐野繁次郎装幀集成」が発売。資料的価値もさることながら、デザイナー諸氏も心躍り何かひらめく事受け合いな必見の1冊となっております。本の発売と時を同じくして実物の本が見れる展覧会が開催とのことで、ちょっと覗いて来ました。
渡仏しマティスに師事、ミロとも交流したという佐野繁次郎だけにフランス語とサノシゲ書体の相性はバツグン。日本語すらフランス語に見えてくる不思議。エスプリきいてます。
写真では分かりにくいですが手書き文字と共に得意技としてたパピエ・コレ(1930年代フランスで盛んだった手法。仏語で、パピエ=紙、コレ=糊、英語で言うところのコラージュ)な装幀たち。布とかもガシガシ貼りこんでます。めちゃくちゃ可愛くないですか?
1955年の創刊号から1969年まで表紙を手がけた今でいうタウン誌『銀座百点』の表紙たち。50〜60年代のものとは思えぬモダンさ。壁一面に年代順に敷き詰められいっきに見せられると目から鱗、唇から涎。
光っちゃってますが左上 A Ri Yo Siとポップに描かれた有吉佐和子「げいしゃわるつ・いたりあの」思わずジャケ買いならぬ装幀買いしたくなります。
下絵のような荒々しいタッチの絵も素敵。
サノシゲな背たち。見れば見るほど独特、ドクトク。
右手前「料理のお手本」サノシゲ書体のみで構成された大胆かつユーモラスな耳なし法一装幀。
そんな貴重なサノシゲ装幀本がこんなに勢揃い!
ひと目見たら忘れられない、踊ってるかのようなリズミカルかつ力強い手書き文字(勝手にサノシゲ書体と呼んでます)は佐野繁次郎以外のなにものでもない存在感。こんな書き文字を書けたらいいのになぁとため息を漏らすデザイナーも多いのではないでしょうか。装幀の方も1930〜60年代とは思えないくらいモダンなデザイン。若輩者が言うのもなんですが間、空間の取り方も絶妙かと。マックス・フーバーやマックス・ビルなど欧米の装幀もいいですが、ちょっとニッポンのいにしえのブックデザインにも目を向けてみてはいかがでしょうか。
「佐野繁次郎装幀集成」
(みずのわ出版)
2,200円+tax
『佐野繁次郎 装幀コレクション』展
会期:2008年11月1日(土)2日(日)
3日(月)8日(土)9日(日)
10日(月)15日(土)16日(日)
13時〜19時までご覧頂けます
会場:アトリエ箱庭
大阪市中央区北浜1-2-3-301
Thanks: Kazuko Koda_Atelier hakoniwa / Tetsuo Hayashi /
ワタクシundersonがちょっと気になるアンチクショウと旨い珈琲でも飲みながら肩肘張らない丸腰放談の中からクリエイティブの薬莢を見いだす針小棒大なコーナー。
Editor/
tsutomu horiguchi
from underson
2012.11.20 Tue