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▶畠井武雄 Le pivot

Cosmic Surfin'|2008.06.12 / Flip


今回のFlipはちょっと趣向を変え、大阪出身で現在フランスはパリでデザインスタジオ Le pivot(ル・ピヴォ)を主宰しフランスのTVCFプロダクションLes Telecreateurs / UFOやPassion Pictures、CHASED BY COWBOYSなどヨーロッパのプロダクションとディレクター契約を結び、日本国内においてはSony、Nike、Honda、資生堂などそうそうたるクライアントの映像を手がける映像ディレクター畠井武雄さん。日本とヨーロッパを股にかけ様々なプロジェクトで活躍中の畠井さんの作品は、完成度の高さは勿論のこと、日本のアニメ的な部分や氏のアイデンティティカラーでもあるピンクが示すように可愛らしさやユーモラスさがそこかしこに溢れてて見るものに楽しさを与えてくれます。
ちょうど来日されてたんで映像の専門的な事はさておき、ちょっとお話聞いてきました。


H:畠井武雄
U:underson

U

映像の事とかあまり分からないんですけど,役割的には何をしてるんですか?

H

カテゴリーによってケースバイケースだけど
映像の作業って完全に分業なんです。工場みたいな。
撮影はカメラマンに任せ、イラストやキャラクターはイラストレーターに任せる
で、その全てを含んだ映像の雰囲気、方向性を
ディレクションしていくのが僕の仕事ですね。
Le pivotという会社を作ってからは監督業をさせていただくことが多いです。

U

動かしたりする作業も頼んだりするんですか

H

そういうケースもありますし自分でやる時もあります。
僕、映像とか始める前はプロダクトデザインやってて
もともとモノ作りから映像に来てるんで
自分で作れる絵は自分で最後まで作り上げたいっていうのはあります。



Lepivot demo version 4.0
Uploaded by lepivot


U

ヨーロッパと日本の仕事の割合ってどんなもんですか?

H

今は日本半分、ヨーロッパ半分くらい

U

フランスで日本の仕事をする難しさってあります?時差とかもあるし

H

慣れてきましたね。距離があっても問題がない感じで。
インターネットの技術も発展してるし

僕が夜中まで仕事しFTPにアップして
寝てる間に日本側で打ち合わせしジャッジし、
朝起きたら返って来てて
またその仕事を始めるというサイクルが出来てます。
待ち時間がなくなってわりといいかなぁと

U

仕事に対するスタンスも日本とヨーロッパでは違いますよね

H

フランスって、物が大事とか、いい車乗ってるから私は凄いんだよみたいなそういうステータスの取り方はせずに
モノよりコト。旅行に行くコトとか、食べるコトとかすごい大事にしてる

自分の体験とか、自分の考え方とかの方がすごい大事

だから夜中までバリバリ仕事やってるのはあまり優秀ではないみたいな(笑)
早めに切り上げて自分の時間を持って
本を読んでるみたいな方が生活が高いみたいな

まぁ、もうちょと働いてもいいかなって思いますけど(笑)



U

仕事の進め方の違いを感じる事ってあります?

H

日本の方がイージーな感じがしますね
それぞれのプロフェッショナルな領域をかなり破ってるというか
日本だとクライアントとか代理店の人が
ディレクター的立場で物事を決めていったりしますけど
ヨーロッパだとそれぞれのプロフェッショナルだから
クライアントはクライアントとして
ディレクター側に任せる事は全て任せる。
任せられるからにはディレクターはそれなりの責任をもつ。

だからクライアントがディレクターを選ぶ時
ディレクターはスクリプトというか
アイデアノートみたいなのを用意するんですよ
このフィルムに対して私はこう思ってますっていう
それに対してクライアントが本当に気に入らないと選ばない。
最初の段階がすごく難しいですね。

あと日本の場合、最後の最後までタイプ数が多いんですよ
お客さんが喜ぶタイプ、ちょっとトンガったタイプ、
背景の色違いを何タイプか作ってお客さんに選んでもらいましょうみたいな
そんな所もちょっとイージーな感じかも

U

なんかすごく日本的ですね。個でなく全体主義的な。

H

あと日本だと空気で分かってくれるとかあるじゃないですか
赤って言ったら太陽だったり国旗の赤だったり
なんとなく空気で分かるんだけど
向こう、とくにフランスだと人種が入り乱れてるんで
色とかカタチとか構図とかキーワードとか
一定の何かっていうのが無いんですよ。
別々な赤というキーワードを持ってるんで。

だから空気で分かってくれるというのが難しいので
言葉で理路整然と決めていかないと分からないというのが多いですね。

そういう意味で
言葉に落とし込んでディレクションしていくのは
向こうは上手だなと。

フレームを変えたい時
ディレクターがどう説得するか
何でこのフレームがいけないのか
こういうライティングにしたいんだとかを
ちゃんと言葉で説明しないと


権力では動かないから




Nike - Hybrid
Uploaded by lepivot


U

映像やってる人からしたらYou Tubeとかってどうなんですか?

H

今高画質、ハイビジョンの方向性がある一方
You Tubeのような汚い画像でも全然OKな人たちが多くなってるじゃないですか
見てる人達の目の能力が下がってきてるのかなって

ただ大事なのはコンテンツ。

今、画像のクオリティの高さだけが売りのコンテンツがすごく多くて
面白いストーリーであるとか
面白い発想のコンテンツとかが少なくなってきてる。

You Tubeにアップされてるような素人が作るモノに
メインのマスメディアで流れてるコンテンツが
完全に負けてますからね。



PSST!2 LOQUACIOUS EYESICLE WILDBITES
Uploaded by lepivot


H

フランス語喋れずにフランスへ来たので
こういうクリエイティブな話をする機会ないんですよ

U

今は喋れるんですか?

H

仕事を進める部分に対しては問題ないんですけど
トラブルとかがあるとちょっと難しいですね。

フランスに来て8年なんですけど
他の人がどういう風に考え作ってるのかって
深い内容を聞く機会がほとんど無いんですよ
インターネットでインタビュー読むとかくらいで

だから自分に問答してるだけっていうか

色を決めて行くプロセスはこれで良いのか?
カタチを決めて行くプロセスはこれで良いのか?
自分はどう思うんだ?って自分に問いかけてる

自分で検討して、いつも自分に聞いてる事が多かった



グラフィックの世界って流行とかってあるんですか?

U

ありますね

H

みんなそういう風な事したがるんですか?

U

したがるというよりは、クライアントに求められるからという部分の方が大きいかも。

H

CM作ってた時も凄い流行があって
みんな言う事が同じになる
なんでみんな周りの人に合わせるのかなぁって思ってたんですけど
10年くらい仕事してたら自分も結構追いかけてるような所があって

東京で作ってる時は、
静かな所とか落ち着いてる所が
すごい自分のネガティブなポイント、弱点だなと思ってて。
もっと賑やかだったり、激しいものしなきゃ喜んでもらえないとか
そういう風にしなきゃいけないと思ってたんですけど

パリ行って、フランス語喋れないんで誰とも話せなくなった時(笑)
そういうしがらみからパ〜ッンって抜けた

静かな所、フェミニンな所は
男性として良くないんじゃないかなと思ってたけど
逆にそういうものの方が面白いんじゃないかなと思えて来て
恥ずかし気もなく出すようにしていったら喜んでもらえて

だからLe pivotもピンク色で女の子っぽくなってるのは
そういう部分をそのまま出してる感じ。

流行とか全然気にしないし
これが好きだからこれを押し通しますみたいな

だから今すごくフリーな感じ

肩の力を抜いて仕事が出来る気がします。




Relation Link
Le pivot http://www.lepivot.com/

Flip INDEX

ワタクシundersonがちょっと気になるアンチクショウと旨い珈琲でも飲みながら肩肘張らない丸腰放談の中からクリエイティブの薬莢を見いだす針小棒大なコーナー。

Editor/
tsutomu horiguchi
from underson

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2012.11.20 Tue


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