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▶NEXT21

ever growing our life|2012.10.25 / Flip

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デザインの種は街に満ち溢れている!をモットーに、日々osaka field tripに勤しむワタクシ。本日は谷町界隈をのんびりふらふら散策。古い街並やNEW SHOPなどを巡り、旨いと評判の<赤い実コーヒー>へ向かい歩いていると、突然目の前に、木々に包まれ鬱蒼とした素敵ビルディングが! ガーデニングの延長というにはメタボリック風建築と相まって向かうベクトルが違うような……おまけに1Fに日本野鳥の会の事務所があるというあまりにも出来過ぎなシチュエーション! 緑に覆われすぎたこの建物、一体なぁに?

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実はコレ <近未来の都市での環境・エネルギー・くらしについて考える>というコンセプトのもと1993年に大阪ガスが建設した実験集合住宅「NEXT21」なんですって。言うなれば、これからの暮らしをデザインする実験場というわけ。ちょっと興味深いので許可をもらって中を見せてもらいました。

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当時は温暖化対策だったかもしれませんが、現在の節電にも繋がる、屋上緑化や、緑のカーテンよろしく各階のテラス、中庭、外構など、いたるところ緑だらけ。巷でよく耳にする「環境共生住宅」とは異なり、NEXT21は<過密な都市内で純粋に自然環境がどれだけ回復するかを試す>というプロジェクトのもと、ビオトープ(ビオ<生命>トープ<ギリシア神話で場所>生物の棲息する場所を意味する造語)なアプローチで、建築造園とは違った、あまり手入れをしない自然的なカタチにしたのだとか。その結果がコレ

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現在、次なるフェーズへ向けて工事中らしく、緑のお手入れが行き届いていないそうですが、建物を飲み込まんばかりにコンクリートを覆い隠し、人間の管理の手から逃れたことを喜ぶかのようにイキイキと増殖した自然な状態がたまらなく素敵かと。

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書籍「NEXT21 その設計スピリッツと居住実験10年の全貌」に収められたNEXT21のエスキース。これって、ラ、ラピュタ!?
緑化はもちろんのこと根を張るというイメージが素敵。

next3.jpg町屋を立体的に構成したデザインとなっているNEXT21。階段や橋、廊下に回遊性をもたせたル・コルビュジエ的立体街路にすることで、住人同士のコミニケーションをデザイン。袋小路や裏路地まであり、グルグル回ることで、いろんな発見がある空間となっています。
高い所が大の苦手なんですが、せっかくなので渡り廊下を歩いてみるとドングリが転がってました。恐怖の中にちょっとだけほっこり。

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大量生産、大量消費、大量破棄といった使い捨て型の経済システムを見直すというコンセプトの住まい。震災後の今だと、その考え方は真っ当で分かり易いのですが、バブル崩壊後とはいえ、93年に始めたというのがいいと思いません?
建物を長く使用するための工夫として、構造躯体(スケルトン)、住戸内装(インフィル)が分離された建築システムを採用。100年間の長期耐久性を持つ躯体を傷つけることなく住戸を改修することができ、パイプスペースに捉われない大胆な水周りの移動も可能というフレキシブル配管により、自由度の高いリフォームが可能となり、時代や家族構成の変化に柔軟に対応でき長く住めるというわけ。
居住スペースは、大阪ガスの社宅として使用され、実際住んでみての様々な実験も行われてました。

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巣箱や水飲み場がいろんなところに。撮影してる間もピーチクパーチク鳥のさえずりが常に聞こえていたのですが、野鳥の好む実のなる木や広葉樹、香木などを植えたことで、いろんな野鳥がやって来るらしく、1階に事務所をかまえる日本野鳥の会大阪支部のチェックにより22種類の野鳥を観測。また屋上に飛来してきた野鳥が1階の中庭まで降りやすいように、緑の連続性をもったセットバックの構造になっているという気配りも。

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鳥が運んできた? 風にのってやってきた? ランドマークのように屋上にそびえ立つ桐の木は植栽したものではないらしい。

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と、緑に覆われたNEXT21を探訪してみましたが、こんなご時世に「都会で緑に囲まれて暮らす」なんていうと、なんだかスロウで素敵に聞こえますが、これだけ緑が多いと木々や雑草の管理、落ち葉、蚊、毛虫、鳥の糞などいろいろ問題があり、快適を得るためのリスクを解決していくため、社宅として住人がいた時はみんなで管理してたそう。緑が取り持つコミュニティーデザインですね。

震災以降、暮らしというものがクローズアップされる今、すまいのカタチ、エネルギーのこと、環境のことなど、これからもちゃんと考え続けねばとNEXT21を後にするのでした。

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Thanks: 大阪ガス株式会社 リビング開発部
参考文献: 「NEXT21 その設計スピリッツと居住実験10年の全貌」(エクスナレッジ)


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※外から見ることは可能ですが、館内は立ち入り禁止です。今回は大阪ガスさんに許可をいただき館内を撮影させていただきました。


http://www.osakagas.co.jp/rd/next21/index.htm



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ワタクシundersonがちょっと気になるアンチクショウと旨い珈琲でも飲みながら肩肘張らない丸腰放談の中からクリエイティブの薬莢を見いだす針小棒大なコーナー。

Editor/
tsutomu horiguchi
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2012.11.20 Tue


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