Design Logistics|2012.03.10 / Flip
わたしたちの日々の暮らしのすぐそばにあるプロダクト・段ボール。八百屋さん、果物屋さん、コンビニ、スーパー、宅配、引っ越し、ネットで注文したって段ボールに入って送られてくるわけで、段ボールのない生活ってちょっとありえないくらい日常にあふれてますよね。 そんなわたしたちの生活に寄り添う段ボールってどうやって作られているのかちっとも知らないと思いません? 知らないことは教えてもらいましょう! と、段ボール印刷の要である版を製造している東大阪の「相互製版株式会社」さんに「これ誰がデザインしたの?」ならぬ「これどうやって作ってるの?」な社会見学に行ってきました。
現場を見させていただく前に、デザイン課の北川係長(右)と同じくデザイン課の小仙さん(左)にレクチャーを受けました。北川さんは、子どものころ、お菓子の空き箱が街の商店街になるような仕掛けが好きで、そこからパッケージの世界に興味をもったのだとか。
段ボールの印刷はオフセット? シルクスクリーン? インクジェット? 実は段ボールはおもにフレキソ印刷という手法で刷られています。柔軟(フレキシブル)で弾力性のある樹脂のプレートに凸凹をつけた版で印刷を行う凸版印刷の仲間。版が柔らかく弾力性があるので、表面に凸凹があり潰れやすい段ボールの印刷に適しているそう。凸版をダイレクトに印刷するため均一なベタ面は美しく刷れます。
また、通常の印刷では油性インクを使用することが多いのですが、フレキソ印刷のほとんどが水性もしくはUVインクを使用することから環境に優しいため今注目の印刷らしく、外食産業では包み紙や紙ナプキン、食品パッケージなど従来のグラビア印刷からフレキソ印刷に切り替えだしており、マクドナルドも2012年末までにすべての包装紙をフレキソ印刷に刷新するそう。欧米でのフレキソ市場はパッケージ印刷分野においてかなり普及しているのだとか。知らなかった!
段ボールの印刷って、オレンジ、紺、青、ミドリの印象が強くないですか?。実はこれ、段ボール印刷のインキはオフセット印刷などで使用するプロセスインキとは違う専用のもので、色数も限られているから。色見本も、もともと色のある段ボールに刷るため、白系茶系の用紙に刷られていて実際の色味がわかるというところは段ボール専用ならでは。
「印刷色がすごく限られており、基本この中から3色選ぶみたいな感じです。DICで指定されても「近いのないよ」って(笑)印刷屋さんにあるのはだいたい10色くらい。無い色は特練り(インクを混ぜて調色すること)でつくります」
かつてはこのように手で削っていたことも。もはや木版画の世界。版は紫外線で固めているので、日にあたると劣化するので日陰の風通しの良いところで保管管理。
それでは現場へ。
段ボールの性質上、版などに企業名や商品名がはいっているため写真を自粛しましたのでやや分かりにくいですがご勘弁を。行程をみるというより現場の雰囲気ということで。
現在の印刷はFTP(Film to Plate)より製版フイルムを使用しないCTP(Computer to Plate)が主流ですが、フレキソ印刷はフイルムを使用(CTPのフレキソもあるそうですが段ボールに関しては納期やコストなどを考えるとまだアナログがベターだそう)。デザインされた図版を文字部分とフチ部分の2枚のネガフイルムに出します。印刷がブラックボックス化して久しい昨今、フイルムがあるというだけでものづくりの実感がわいてきます。
大きなフイルムに効率よくデザインが配置されています。
フイルムとフイルムの間に樹脂を挟み専用の機械にかけ凸版をつくります。青い部分が樹脂。
専用の機械にかけると必要な部分のみ樹脂が残り、不必要な部分の樹脂は下に落ちます。これを洗浄、乾燥させ版の出来上がり。
出来上がった版を試し刷り。かすれや問題がないかを人間の目でチェック。
「段ボールは活版のようにかすれが味とは思ってもらえない世界で、ちょっとでもかすれたらアウトで不良品になります。印刷屋さん的にもかすれるくらいなら潰してしまうような。なのでデザインする段階でそういうことも考えデザインしていきます」
凸版ゆえ微妙な厚さの違いで刷りが変わってきますので機械で数値をチェック。温度もキチンと管理しています。
説明をしてくださった製版室の澤井さん。言葉の端々に製版のプロフェッショナルの自信と誇りがにじみ出ていました。
製版室で出来上がった版を切り離していきます。
凸版の出来上がり。細かい文字やバーコードの線も綺麗に出ています。
出来上がった版にローラーでインクをつけ紙に刷ります。グラフィックデザインで言うところの入稿データの出力見本みたいなものでしょうか。熟練のテクニックで印刷されたような美しさで刷られていました。
刷られたものと版をチェックし、印刷所へ旅立っていきます。
納品の最終段階のお話を聞いてる傍らで小仙さんが現場の方となにやら情報交換中。デザイン課と現場の風通しは良さそう。
やっぱり現場は楽しい!
最後に、デザイン性よりも、バーコードがきちんと認識するか、商品名や品番など物流における機能性が絶対な段ボールにおいてどんな想いを持って取り組んでいるか小仙さんに聞いてみると
「技術が進歩して、こんなものも出来ます、あんなことも出来ますというのもいいですけど、今の3色しか使えないとか線数が少ないという制約の中でダイナミックなデザインをやりたいと思っています。クライアントさんからは斬新なもの、派手なものを求められるんですが、その要求はキチンとクリアしたうえで、商品名の文字を綺麗に組み、配置する場所にもこだわるとか、誰にも賞賛されないかもしれないけど、そういうところをキッチリ手をぬかずに地に足ついたデザインをする。そういうことをこの仕事をやりながら見つけたような気がします。
「Design Logistic」という言葉を名刺に入れてますが、ロジスティクスは物流という意味でひろく使われているんですけど、もともとは軍事用語で補給部隊のポジションをさす言葉で、物流に使われるグラフィック情報をあつかう者として段ボールのデザインにおいても補給部隊のようななくてはならないポジション、そういう場所があるんじゃないかと思って日々デザインをしています。」
明日からちょっとだけ足を止めて段ボールを見てみませんか?。
相互製版株式会社
http://www.sogo-seihan.com/
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ワタクシundersonがちょっと気になるアンチクショウと旨い珈琲でも飲みながら肩肘張らない丸腰放談の中からクリエイティブの薬莢を見いだす針小棒大なコーナー。
Editor/
tsutomu horiguchi
from underson
2012.11.20 Tue