La Femme est L'Avenir de L'Homme|2011.03.31 / Flip
京都の中でもゆったりした空気が流れる北山にある雑貨店「Alphabet(アルファベット)」。フランスをはじめヨーロッパ各地の、子供すぎず大人すぎない、暮らしにちょっとしたプラスをくれる雑貨たちが所せましと並ぶ様は、雑貨好きならずともわくわく心はずみます。そんな「Alphabet」のオーナー郷田英子さんは、同店の他にも、残念ながら閉店してしまいました「自由に」「自然に」「自分で」というコンセプトで学べる教室「Trade mark Kyoto」や、リトルプレス発行、人形劇サポートシステム「Theatre Zooiii」、オリジナル浴衣の制作、手ぬぐいブランドのディレクションなど多岐にわたる活動をしています。
女子ならずとも、自分の想いが詰まったものを集めたお店をやりた〜いと思うのは人の常。しかし、オモテに見える華やかさのウラには、ふわふわした気持ちでは太刀打ちできない、それ相当の苦労と覚悟があるはずとお話伺ってきました。
ーー 最初のお店は実家の写真屋さんの2階だったとか。
今も弟が継いでやってますが、写真材料屋さんなんです。その2階でバリ島とかアメリカとかミックスしたエスニック雑貨屋さんをやりました。
ーー パリじゃなくバリだったんですか?
国を限定しているわけではなく、アジアでもヨーロッパでも日本でも、染め物とか織物など手でつくってるものが好きで、中でもピンとくる時代があって、それが感じられる手づくりものを扱ってました。それは今でも好きです。
ーー それはいくつくらいの時ですか?
25才の時です。商売のことなんて分かってないし、考えたとしても分からない状況で始めているので……今も同じというこのビックリさ(笑)
ーー それからずっと雑貨屋さんをやっているわけですが、正直雑貨屋さんの儲かる仕組みがよく分からないんです。絶対、裏で株とかFXとかやってるに違いない!と
土地転がしとか(笑)今はどこで稼いでいるだろう? ヨーロッパの仕入れのものだけでは確実にお商売にはなってないです。それだけでやってるお店とかありますよね? 私もそれは謎だったりするんですが、1人で小さいお店とかやってるのをみると凄いなと思います。
「Alphabet」をやりはじめて20年目なんですが、10年目くらいの時かな、商売できる気がした時もありました。現場にいるといろいろな情報が入ってくるので、こういうものつくって、こういう風にしたら売れるんだって。でも、それはお金儲けのために "ものを売る"っていうだけのことで、それは嫌だった。もちろんお金は必要だけど、そのためだけにやっているわけではない。お金のためだにやるんだったら、もっと稼げることはいっぱい有るわけで。バランスかな。バランスを崩してまでお金を儲けたいとなると、なにをやっているんだ私は?、てなってしまう。欲しいものがあったらお金がいるけど、欲しいものがなければ、最低限の生活をキープできるお金があればいいじゃないですか?
でも、今ちょっとだけ欲しいものがあるの。だから今は、ちょっと稼がねば!って(笑)
ウチも1回、大きな資本からフランチャイズにしてたくさんお店を出しませんか?って話があったんです。でも、なんにも興味がなくて「なんでするんですか?」とかチグハグな会話をしてました。
何度か分岐点が、あったんだろうけど、自分ではよく分かってないんですよ。自分からしようと思っているわけでなく、周りがこうなったから私もこっち向いた、ということが多い。
ーー そういう思いをもって20年も続いているというのは本当に凄いと思います。
お金儲けだけではないからこそある自由。
楽しくて苦しい自由が(笑)
実は、売れるものをあまり置かないようにしようとも思ってて(笑)それはすごく私の経営ヴィジョンでもあって。それが続けていける理由のひとつになってます。そんなお店になっていったらいいなと。気持ち的には25のときと変わってないです。
自分が「いいでしょ」というものを「いいよねそれ」って言ってもらえるのが嬉しい。
お商売としては素人も素人です(笑)。
ーー 場所があるっていうのはいろんな可能性がありますよね?
今、なにが残っているかというと場と人。場をつくったことで、いろんな関係性が生まれたというのが財産ですね。
ーー そういう意味では、場そのものであった「Trade mark Kyoto」ですが、残念ながら閉められたんですよね?
あれはまさに場を作ったんですよ、場のみを。7年もやってたんです。我ながら凄いなと。
いろいろあって閉めることになりましたが、でも、閉めるいいタイミングだったと。変な宗教観じゃないけど、誰かにやらされてる感じ。自分でいろいろやりたいなと思ってもなかなか前に進まないことっていっぱいあるじゃないですか。でも、前に進むことって、なんか知らん間に進んでるみたいな。
ーー 僕、今気になっているテーマが "出産と仕事" なんです。やりたくてもやれないという現実ってあるじゃないですか? 郷田さんも、結婚し子供もおられるし、スタッフも女性ばっかりですよね?
19才の息子がいるんですが、彼と同じ時間「Alphabet」をやっている。私が働いてる時は誰かに預けていた。私は若いころ家族を犠牲にしてました。みえなかったと、今そう思います。
雑貨屋さんって、時間とお金の対価が比例しないじゃないですか? どこまで売り場を可愛くつくるかなんて、正解もないし、やろうと思えばいくらでも時間かけられるし。だからもう、好きでやる、好きだからできるってい気持ちがないと雑貨屋さんってできないと思う。そう思うと、家族を持ったり子供を持ったりしても、好きな人には続けさせてあげたい。週イチでもいいし、やれる範囲を考えれば、なんぼでもあるなと。その人に出来る仕事をどうするか。5年くらい前からそういうのも仕事だと思っています。
ーー 要するに時間のつくりかたですよね。フランスの知り合いから言われたんですが、夜中まで働いてる意味が分からないって。
それ私も思います。日本が一番住み易いし、好きですけど。仕入れでフランスに1〜2週間行くじゃないですか、そしたら休めるんですよ。でも日本に帰ってきて、そのペースで休もうとすると、なぜか休めない。この空気感は何なんだ? って。同じ人なのに。
向こうってバカンスで1ヵ月くらい休みますよね。なのでコッチも1ヵ月休んでやる!ってアタマでは思っているんですが、まだ実行したことがなくて。お店してる人ってお店を閉めるっていうのがなかなかね……でも、フランスしょっちゅう閉まってるなぁ(笑)
ーー 僕もしんどかった仕事の後に、1日お休みとって京都のお寺とかでボーっとしたりするんですけど。でもこの苔の配置、うまくデザインされてるなぁとか、つい思ってしまいます。
頭をカラッポにするって言っても、カラッポにできないですよね。ふと見たあのコップ可愛いとか、あの仕事のアレにこうしたら可愛いんじゃないかとか思ってしまいますよね。カラッポじゃないわって。
日本の勤勉さというか、結局はやりたいんでしょうね。休みたいんだったら休めばいい、でも休まないんでしょ? 休みたくないんでしょう。
ーー これからもいろんな事やっていくんでしょうね。
まだ何かやりたいなと思っているうちは、やろうかなと。一生現役て言ってます。
「80になってもまだやってはんで郷田さん」ってね。
気持ちはは変わらないけど、見え方としてカタチは変わるのかもしれない。いろいろやってますよねって言われますけど、箱の中でなんとなく一緒なんです。最後はみんな繋がってる感じ。
ほんとこの5年ってあっという間だったんですよ。
この5年私なにしてたんだろ?てくらい。
で、今、久々に何かやろうって感じで、
やりたい事3つくらいあるんですけど、
多分いっぺんにやっちゃうんだろうな……(笑)
順番にやればいいのにね。
とりあえず今はね
ミュージシャンになりたいんです(笑)。
Alphabet
京都市北区上賀茂桜井町101 エデン北山1F(北山通り植物園北側)
http://www.alphabet123.com/
ワタクシundersonがちょっと気になるアンチクショウと旨い珈琲でも飲みながら肩肘張らない丸腰放談の中からクリエイティブの薬莢を見いだす針小棒大なコーナー。
Editor/
tsutomu horiguchi
from underson
2012.11.20 Tue