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▶PR-y

THE CORNERSTONE|2012.02.10 / Flip

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アート活動を通して重度の知的障害者の自立を支援するアトリエコーナス(大阪市阿倍野区)を約半年間にわたり取材し、その日常と創作活動の様子を綴ったPHOTO BOOK『THE CORNERSTONE』を出版した社会活動ユニット「PR-y(プライ)」。ユニット名はPR(パブリックリレーションズ)と pry(詮索する・こじ開ける)という言葉を合わせた造語で、メンバーは、日本人、カナダ人、ベルギー人のクリエイターたちで構成され、社会で起こっている問題に介入し、実際の現場で見たもの・感じたことをクリエイティブを通して発信することを目的に活動している。そのPR-yを主宰するクリエイティブディレクター笠谷圭見さんに取り組みのことなどうかがってきました。

ーーこの取り組みのキッカケはなんだったんでしょうか?

東日本大震災があって、会社として復興支援をしようということになり、いろいろ考えるなか、なにかしたいけど、なにをしたらいいのかわからなくて、お金を送るくらいしかできないという状況で会議を重ねていたんです。その中で、スタッフのひとりから「もっと身近にも助けが必要なひともいるんじゃないか?」という問いかけがあり、ハッとしたんです。実は個人的に障害者の支援をしたいというのを2〜3年前くらいから思ってて、でも思っているだけで、それすら何もできていないなと。_震災の復興支援プロジェクトは現在も動いているのですが、別のプロジェクトとして障害者支援活動に取り組んでいるのが「PR-y」です。大きなことはできないけど、自分たちの職能をいかしてなにか役にたてることはないのかと考えてたとき「アトリエコーナス」に出会い、そこで見て感じた、アウトサイダーアート/アール・ブリュットの意味や価値、魅力を一人でも多くの人に伝えたいと。

ーー「コーナス」さんとの出会いは?

こういう施設なので、プライバシーの問題とかで、どこもシャットアウトという話を聞いていたのでダメもとで片っ端からあたっていこうと思っていたのですが、知人に紹介してもらった「コーナス」さんに訪問し、4時間近くお話をさせていただき、こちらの意図を理解してもらって取材の許可をいただきました。

ーーこういった施設ってどうやって運営されてるんですか?

ほぼ国からの補助金ですけど、金額を聞くとそんな額ではとてもやっていけない額です。
例えば「何人が通所できる施設にしたら、いくら補助金が出ます」といったシステムなんですが、大人数を預かるとなったらそれだけ職員も増やさないといけないので結局チャラになってしまうという。

ーー「コーナス」さんの規模は大きいんですか?

小さいです。ちょうど30年になるんですけど、社会に受け入れ先がないなら自分たちでつくろうと、障害児をもつ親御さんたちが自分たちでお金を出し合って設立されたそうです。日本では大半がそういう感じらしいです。
アート活動はまだ7年目なんですが、今のスタッフさんたちは福祉と無関係な人たちで、当初は資格をもった職員さんが従事していたそうですが、プロはどうしても事務的な扱いをしてしまうらしく、そういうのに疑問を感じて現在のスタッフ構成にされたそうです。今は美大出身のスタッフも2人いて、彼らの側で絵を描いて、それをマネさせるという感じでやりはじめたみたいです。アートに夢と可能性をかけたとおっしゃってました。

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ph1.jpgKOJI NISHIOKA / MAKOTO OKAWA

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アート活動をはじめて、たくさんの発見があったそうです。この男性は絵を描き始めてから分かったんですけど「男性恐怖症」だったんです。
「VOUGE」が大好きで、そこに載っている美しい女性を描き写すことから始めたんですけど、男性の写真は全部バツして顔を隠したりするんです。ある専門家に彼の絵を見てもらったら、彼は「VOUGE」に出ているファッションを自分が着ている絵を描いていると。自分を女性だと思っているみたいなんです。そういうことが分かったら、新しいコミニケーションの取り方が見えてくるじゃないですか、絵を描いたことによって初めて分かったという。

ーー絵って正直ですね

7人のアーティストが在籍しているんですが、彼らにはほとんど言葉も通じないので、コミニケーションもままならないのですが、やっぱり作品はグッとくるものがありますね。


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彼の作品は海外からも評価されてて、ロスやニューヨークのギャラリーから個展のオファーがあったりするのですが、作品を送るお金もままならないという。



ーー自分たちに出来ることとして具体的にはどういった活動をしたんですか?

「100万人のキャンドルナイト」という若者がいっぱい集まるイベントに出展して、障害者の作品だと一切告知せずに展示したんです。そこへ集まった若者たちに見せつけるために。
実は今回のフォトブックよりもそっちを先に考えてて。
結構反応がありました。そこからどう発展するかは分からないですけど、キッカケはつくれたかなと。こういうやり方しか出来ないし、やり続けていこうかなと。身内や福祉関係者しか集まらない中で何回やっても一緒じゃないですか? やり方を工夫したら、もっといろんな人が集まり、ひろがると思うんです。
「障害があるのに頑張っています」という見せ方は逆にちょっと身構えてしまうというか……。なにかそうじゃない見せ方、いいものをふつうにどんどん宣伝していくだけでも意味はあるかなと。

ーー自分たちが得意とするアプローチでいろんな入り口をつくってみるという

この人形とかも取材に行って初めて見たのですが、施設に来た人や役所などで「マコトくんが作ったマコトくん人形」として売っていたんですけど、少しやり方を変えるともっと幅広いターゲットに売れるかもしれないと思い、一旦預からせてもらい、「マクート」と命名し、PR用のポスターを作ったりして、同じものを売ってても見せ方、ブランディングで大きく変われる、僕らの職業柄そういうことができるんじゃないかと。

アートという視点でみたときに、埋もれてしまうのはもったいない。
本人たちが発信する可能性がゼロなのでそこにいいものがあるなら
誰かが気付いて発掘して、PRするべきなんです。


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ーーアウトサイダーアート/アール・ブリュットを取り巻く環境ってどうなんですか?

Facebookで「こういう活動が大阪でおこっているというのが素晴らしい」というメッセージをいただいたんですが、それって今までの大阪は福祉というものに対する意識が低かったという意味ですよね。
日本でもアウトサイダーアート展って増えてきてますけど、やはりまだまだ関東中心で、昨年「コーナス」のメンバーたちが出展した『ART PICNIC』は芦屋市立美術博物館設立以来はじめてのアウトサイダーアート展だったんです。

ーーやっぱりヨーロッパの方が盛んですか?

「Raw Vision」(http://www.rawvision.com/)というアウトサイダーアートの専門誌が普通に流通してたり、昨年、日本人のアウトサイダーアートを集めた展覧会がパリで開催(パリ市立アル・サン・ピエール美術館「ART BRUT JAPONAIS」その後日本国内で巡回)されたりとマーケットが確立してます。
ヨーロッパの美術関係者が日本の施設と直接連絡をとって作品を買いあさって高値で売りさばいているという話があるんですが、そういう状況すら日本では知られていないですよね。


でも、ヨーロッパの連中が直接買いにくるくらいなんで、
相当いいものがあるんだと思います。


ーーこれからのPR-yは?

活動をはじめて、まだ半年ほどですけど自分のなかでコロコロ着地点が変わったりしてて。あの人形もよかれと思ってどんどん売っていたんですが、施設に取材に行ってるときにある職員さんからが「売れるのは嬉しいけど出来上がって余韻を楽しむ間もなく手離れするのは寂しいね」とかって意見をきくと、もしかしてこれってアカンことしてるの? とか。そういうことの繰り返しですね。
もちろんPHOTO BOOKが終わりではなくPR-yの活動はずっと続けることになります。僕たちが決めた唯一のルールが「身の丈にあったことしか絶対しない」なんです。この活動は継続できないと意味がないので。


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PHOTO BOOK「THE CORNERSTONE」は
スタンダードブックストア、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店、iTohen、アセンス、ON THE BOOKS他にて販売中。
B5変形 / 84pages / 600yen + tax
(この本の収益金は、半年間取材させてくれてありがとうございました!の意味を込め、今後の創作活動のための画材購入費として全額アトリエコーナスに寄付されます。)

Relation Link
http://www.pr-y.org/



Flip INDEX

ワタクシundersonがちょっと気になるアンチクショウと旨い珈琲でも飲みながら肩肘張らない丸腰放談の中からクリエイティブの薬莢を見いだす針小棒大なコーナー。

Editor/
tsutomu horiguchi
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