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▶築山万里子 .2

Color Me Blood Red|2011.03.09 / Flip

color4-1.jpg_effected.jpgcolormeblood.jpg印刷工程の要、色校の戻しって難しいですよね? 人によってイメージする色も違えば表現も違う、どう朱書きをいれたら製版の現場にうまく伝わるのだろう? この書き方でちゃんと伝わってるの? etc……おまけに印刷屋さんに渡してしまうものなので他の人の朱書きを見る機会も滅多にないゆえ、試行錯誤はエッシャーの絵のごとく堂々巡りを繰り返すばかり。
そんな悩みをほんのちょっと解決すべく前回に引き続きアサヒ精版さんのプリンティングディレクター・築山万里子さんに色校について、素人ではないですがアホになって聞いてみました。


M:築山万里子
U:underson

iroko1.jpg

U

「明るく鮮やかに」とか「肌きれいに」って指示しますが、これって、どれだけ明るくて、どう鮮やかなのか分からないですよね? これって基本となるマニュアル的なものとかあるんですか?

M

あります。オペレーターも人間なので、
派手好きの人だったら少しハデな色になったり、
ブルーがちょっと鮮やかすぎたりとか、
その人のセンスに左右されてしまうので、
一応、いわゆる常識レベルのきれいさの基本となる数値というのがあって、
きれいな青空は何%、きれいな顔の色は何%、あざやかな空、あざやかな緑は何%とか。それをもとにして調整していきます。
製版会社によって、その数値もさまざまだと思いますが・・・
まぁ、まずはカメラマンやデザイナーの意向をお聞きしますけれど。

U

自分の好きな空の色とかあるじゃないですか、出したい色。でも希望の色までなかなか上げてくれず、印刷屋さんに「ウチの常識ではコレ」ってよく言われたのですがそれはその数値ってことなんですね?

M

そうでしょうね。現場の人間には、なかなか「ニュアンス」というものが伝わりにくいので。あと、今の機械は平均的にきれいに刷れますが、ある一定の数値以上はインキを盛れないとかもあるので。そういう場合は「ソチラの常識を超えてください」と言うしかないですね。(工場によっては怒られるので、そういう指示は注意してください。)
例えば、印刷の流れの方向によって、空をもっと鮮やかにすると(Cを上げる)、同じ流れにある人の顔が暗くなってきてダメというようなことが現場では起こるので、空の色優先で顔は多少沈んでもいいのか? いや、空が多少黄色っぽかっても、顔色優先なのか? 濃度優先なのか? など現場で判断を迫られることはしょっちゅうです。

U

赤かぶりと赤浮きってどう違うんですか?

M

写真全体が赤かったりすると赤かぶり、
写真の一部が赤い時は赤ウキ、「顔が赤ウキしている」とか?
私の理解ではそんな感じで使い分けてます。

U

赤とMって書き方でニュアンス違ってきたりするんですか?

M

赤味をトルと指示されたら赤と黄両方トル時もあります。
まぁ現場では赤味をおさえるというと
赤だけおさえて黄が浮くようであれば黄色もおさえるので
「顔の赤味が気になります」って書かれると常識レベルでおとす。
ただ、Mマイナスと書かれ現場にそのままいってしまうと
Mだけおさえられる可能性もありますね。

color2.jpg

U

分解に出さず、写真もデータで入稿するときコチラで補正とかどれくらいしたらいいものなんですか?

M

明るくするといってもトーンカーブとかレベル補正とかカラーバランスとか、
それ以外にもやり方はいろいろありますけど、
知識があまりない人が変にさわってしまうとデータ自体が劣化してしまい、補正出来る色の幅が少なくなってしまったりして、結局元画像貰ったり再スキャンってことになるので、基本的にはあまりいじらない方がいいんですけど。

U

あぁ。確かにウチでやってた雑誌「Re:S」では、製版を経験したオペレーターさんが補正をやってくれてたんですが、後ろで見てても何やってるか分からなかったです。

M

プリントがあればそこへ近づけるんですが、デジカメの画像って実体がないじゃないですか? 結果的に何かしらコチラでさわらないとダメなことが多くて、1枚1枚補正することもありますが、同じ方向性に引っぱるのであれば、同じカーブをあてて同様に補正できたりもするので、デザイナーがさわる前のそのままの画像があった方がよりよいですよね。

U

ある書籍の写真の質感がすごく綺麗に出てて、聞いたらポジで入稿だったんですが、やっぱしポジ入稿の方が綺麗にでるんですか?

M

スキャンの仕方でも差が出ます。今はほとんどフラットヘッドスキャンですけど、ドラムスキャンだとやっぱり奥行きがでますね。フラットよりもちろん高いですけれど……。

U

製版で補正してもらう時はRGBで入稿してるんですが、印刷屋さんによってはCMYKで入稿って言われるんですが、それは?

M

オペレーターによっては、CMYKで補正するのがまだまだ得意な人とかもいるので・・・一概には言えませんけど。
ただ、RGBの方がさわれる色の幅が広いのと、
デザイナーがPhotoshopで変換するより、製版の方でRGBからCMYKにプロファイル変換するほうが色の劣化が少なく綺麗に出ますね。

U

プリンターで出力したものを色見本として添付するのはどうなんですか?

M

印刷ではないのでその色そのままを出すというのは難しいですが、全体の雰囲気や色の方向性がそれで確認できるなら有りですね。

U

朱に丁寧な口語調で書いてるんですが、それは細かい指示というより、製版の人に印象良くしようという目的で。これって効果あります?

M

たぶん、現場レベルでは指示以外は細かく読んでないと思います。
どうしても伝えたいのなら別で手紙的なメモを添えたらいいかも……!?
「この人は、こだわってるんだな」みたいな印象付けにはなるかもです。
まぁ、伝わるかどうかは現場によりますけれど……。

iroko2.jpg

U

どう指示を書いて現場の人に理解してもらうかも大事ですけど、その間に立つ営業/プリンティングディレクターさんとイメージの共有をどうするかが大事なんですよね。行き着くところは全てコミニケーションだと。でも色校の戻しって難しいですね。

M

特に、色校と本機では刷り方もインキも違うのでどうしても難しいですね。
コンセで最小のアミ点が飛んでしまうこともあるので口頭で「ここは真っ白ですけど実際は微妙にアミ点があります」とか(笑)
予算があれば色校を実際の本機、本紙でできればベストですけど、なかなかそうもいかないのが現状ですしね。
でも、ここ数年でデジタルコンセの精度はかなり上がりましたよ。
印刷機も水なし、水あり、アミ点の大きさや種類も機械によって違うし、紙によっても左右されるので、デザイナーと営業/プリンティングディレクターが経験値と想像力を働かせてやるしかない。


営業/プリンティングディレクターさんも伝書鳩のように聞きっぱなしではダメ。
とくにウチの場合機械を持たないのでそこはとても大事にしています。
朱の原稿を読み取る力、それを実現するために現場に的確な指示をする。


印刷って100%って難しいじゃないですか
製版の部分で出来るだけ近づけた物を、また現場でいかに近づけるか
そのうえで、ここの間をいかに狭めていくかっていうことで


私にとって汲み取る作業は一番緊張するところ。
それはもう永遠に難しいです。



お話の途中80年代?に刷られたカタログを見せてもらったのですが、印刷の機械や技術は今の方がはるかに進化してるはずなのに「どうしたらこんな風になるんだろ?」とため息が出るような、奥行きある味わい深い美しい写真たちが誇らしげに刷られていました。
今の印刷物が悪いとはまったく思いませんが、効率や便利さを優先するがゆえに失ったもの捨てたものも多いんだろうなぁとしみじみ感じました。




Relation Link
アサヒ精版印刷株式会社 http://asahiseihan.jp/

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ワタクシundersonがちょっと気になるアンチクショウと旨い珈琲でも飲みながら肩肘張らない丸腰放談の中からクリエイティブの薬莢を見いだす針小棒大なコーナー。

Editor/
tsutomu horiguchi
from underson

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