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▶松岡賢太郎_TRITON GRAPHICS

Everything You Always Wanted to Know About Creative *But Were Afraid to Ask|2009.06.23 / Flip


神戸を拠点にグラフィックデザインからアパレルやショップのブランディング、プランニング、ディレクション、「PEEP PAPER」や「Billet」などパブリッシングワーク、プロダクトワーク、関西では知らぬ者はいないだろうTRITON CAFEの運営など、ジャンルにとらわれず、デザインというフィールドにて縦横無尽に活躍するデザイン事務所・TRITON GRAPHICS。代表でアートディレクターである松岡賢太郎さんとちょっとお話してきました。同い年ゆえの必然か?のっけから「今の若者は〜」トークになってしまってますが……オッサン2人からのメセージだと思ってくれれば幸いかと。


M: 松岡賢太郎
U: underson


M

何を聞きに来たんですか?

U

TRITON GRAPHICSのデザインはもちろん、姿勢というか取り組みにも興味はあったんですが、今年2月にやった「DESIGN WORK SEMINAR」のフライヤー見てたら「誰でもデザインは楽しめる」「デザインすることが大好きな方を対象に 誰でもデザインが楽しめる方法を講義にて教えます」というコピーにひっかかって。というのも、このFlipはデザインの種はデザインの外側にあるというか、デザインの外側のいろんなモノのなかからデザインというのを見いだすみたいなのをやってるつもりなんです。
で、最近、世代が2つくらい下のデザイナーさんたちと接する機会が多いんですけど、こうグっとくるものがないというか、何に興味があるんだろう?仕事を離れたところでの取り組みは?こういう人たちはデザインに何がフィードバックされてるんだろう?とか考えることがあって、そんな時にフライヤー見て、コピーは「楽しめる」って書いてあるけど「楽しもうよ」って言ってる気がして、と言うわけで、なぜセミナーをやろうと思ったのか聞きにきました。


M

なるほど。僕がデザインやってみようと思った時もそうだったけど、
当時はレコードジャケットとかTシャツのデザインとか
ファッションとリンクした部分がよくメディアに取り上げられてて
それをカタチにしてる人がデザイナーなんだ、と思い込んでた。
専門学校なんかで教えてくれることも、広告というよりは、
グラフィックを使って何かをつくるみたいなことに特化してたんで。
今グラフィックデザインを勉強してる子たちもそうだと思うんです。

自分のアート作品がカタチになっていくような
アーティスティックなグラフィックデザインと、
商業的な目線で取り組むグラフィックデザインの2パターンあって、
僕がやってるのは商業デザイン。お客さんからリクエストいただいて、お題があって、お題が厳しければ厳しいほど崩して行くのが楽しかったりする、という所での取り組みをやっているんだけど、
若い子からすると「違〜う」「いつになったらジャケットやらせてもらえるんですか?」みたいなところがあって、
そういう2つのパターンのデザインの歪みが年々どんどん広がってる感じがすごいしてきたからかな。



デザインってすごい微妙だなと思うのが、
モノをつくってるっていうのは納期があり、
完成形が見えてるじゃないですか。
でもグラフィックって納期はあるけど完成形というのは無く
その線引きするのは自分。
ジャッジするのも自分。
そこに答えというか意見をするとしたら、
仕事をすすめる際にも言ってるんだけど、
ロゴにしてもパンフレットにしても何にしてもそうなんだけど、
それをお金出して買うかどうか?という所まで責任持ってつくろうよと。
それだったら何やってもいいじゃない。
自分のアーティスティックな部分を出してもいいし、
TRITONっぽくしてもいいだろうし。

そこには完成度が伴ってて、
完成形はないけど
ここまでだったら何千円だして買うかも
という所まで引っ張ってくれたらいいんだけど
なんとなく雰囲気でつくる人が多くて。


本当にお金を出して買うんだろうか?という所まで意識したら
わりとつくれていくような気がするんだけどね。




M

最初に言ってた、音楽の事も知らない、建築家の事も知らない、デザイナーの事も知らないみたいな人が非常に多くて、
というか興味がほとんど無くて。
ちょっと「自分、デザインできるかも〜」(笑)みたいな感じで
デザインの世界に入ってきた人たちが多いのかなと本当に思ってて。


スタッフにもよく言ってるんですけど、
仕事は仕事、やるべき事はやる。
でもそれ以外に、仕事止めてでも遊びに行け!って。
飲み屋に行ったら、お酒のラベルだったり、空間のデザインだったり、映画館だったら、映画館のディテールがあったり、フライヤーだったり、
いっぱいデザインが転がってる。
殻にこもって「仕事しないと!」と根を詰めてやるんじゃなくて
気分転換含め、遊びに行け!、ご飯食べに行け!、飲みに行け!って。

U

今の若者は〜っていうのは嫌なんですけど(笑)僕らの世代ってもっとガツガツしてたような気がするんですけどね。まぁ時代といえばそれまでなんですけど。

M

貪欲さが全然違う。
ダラダラ喋ってたりする事からもいろいろ生まれてくるのに、
スタッフと打ち合わせしてても、
腕時計チラチラみたりして「帰りたいんか?」って(笑)
せっかく喋ってるのになぁみたいな。


好きなものが無いんじゃないのかな?
好きなものあるでしょ?音楽だったり、映画だったり。
そこから頂くモノとかあるから。
それが新たな調理の仕方によって自分の作風になっていったりするじゃない。
僕も憧れのタイポグラファーとかいて
真似するようになって、タイポうまいねって言われるようになり、
それが1つの作風になったり、
クライアントの仕事するなかでアパレル面白いなとか、
自分の好きな世界が広がっていってたような気がするんだけど、
今の人たちって、そのとっかかりの好きなモノが無いのかなって。



U

同い年なんで、写植版下世代ですよね?マックが普及し始めたころ、よく「マックはツール」って色んな人がいってたじゃないですか。マックでいろんな事出来るかもしれないけど、結局は自分の頭だよって。でも、今の若い人たちってマックはツールというよりマックに支配されてる感じがすごくするんですよ。マックという枠の中で全てを考えてるみたいな。

M

想像力ですよね。版下の頃ってモノクロでつくって色指定し、
完成を想像しながらデザインしてるわけじゃない?
ウチもスタッフにコマンドYで
プレビュー外してデザインしろって言ったりします。

カラー、バー触る?数値入力する?

U

数値ですね。

M

でしょ。今の子はバーなんですよ。
C3.152…とか、そんなアミ出るかぁ!みたいな(笑)

U

昔は半端な数字とか指定したら製版屋のオッチャンから怒られましたもんね。あとラフとかサムネイルも、マックでキレイにつくらないと!みたいなところありますよね。サムネイルなんて鉛筆でササっと描いた方が早いのに。

M

意図が伝わればいいのにね。
その感覚がないんだと思う。
マックで作業することが早いと思ってるけど、
いやいや絵で描いた方が早いでしょって(笑)

それぐらい版下最後の世代とはギャップはあると(笑)


null


最近よく考えるのが、組織を作っちゃたから
あと5年、この先5年、
どうなっていなければならないのかってすごく考えて。
今やっているようなグラフィックデザインというものを果たして5年後やってるのかな?やりたいのかな?ってよく考えるようになりましたね。

だんだんWEBというメディアになっていくなか
企業側もインハウスデザイナーみたいにWEBデザイナーを中に抱えるようになって、紙媒体を、エコなんてのを理由に(笑)どんどん削減しようとしてるし。カタログが全てとは思ってないけど、そういうものを無くしていく流れ。


僕らの役割が一旦終わろうとしてる時代が来そうだなと。


だからと言って
WEBデザインに完全に転向するのは絶対嫌だし、出来ない。


そう思ったら
今の延長線上にあるものづくりみたいな事を
見つけていかないとダメなんかな。
なんか違う事しないといかんのかな。
違う事したらいいんやろ?
何したらええんやろ?

U

今なにか好きな事していいよって言われたら何かしたい事あります?

M

作品展したい。

U

グラフィックのですか?

M

何でもあり。写真があってもいいし、
印刷方法とかも、技術的なものも全部取り込んで
やってみたい事、やってなかった事、
チャレンジさせてもらえなかった事。
そんなのをカタチにして燃焼したい感じかな。


それでグラフィックのストーリー1回終わって、
じゃどうしょうみたいな時
それを観てくれた人の意見を吸い上げながら
違う所に行きたい。


商業デザイナーとしての自分がずっといてて、
食べていくためにこの20年間、
企業のためにとか、スタッフだったり自分のためにと思ってやってきたけど
でも、頭の隅にずっとストレスがあって、
ストレスというかコンプレックスというか。
吐き出すっていうことをしていきたいんです。


アイデアを仕事の中でいろいろ出すんだけど、
プレゼンとかで、これ絶対ダメだよ、落ちるよってヤツも、
カタチになってないだけで、
ず〜っと自分の頭の中にいい作品として残ってて。
落ちてるというか、残ってるのは
表現方法がまずいとか、飲食業界でやってはいけない事とか色とかが問題なんですけど、そういう事をやってみたい。
やってはいけない事をやってみたい。
誰にも文句言われないし。


U

ウチはもともと、すごく汚いデザインをしてたんですよ。
読みにくかったり、写植の影を見せるようなゴッタ煮なエログロなデザイン。
なので昔からの知り合なんかは今のウチのデザイン見て「なに気取ってるの?」「モテたいの?」とかよく言うんですよ。そう言われたからじゃないですけど、そういうのを今またやってみたいなって最近思いますね。ちょっとガス抜きたいみたいな。

M

大阪で勤めてたADが神戸に帰ってきてて、
AD3人くらい集まって何かモノつくるのも面白いねって、今やりとりしてるんだけど、そこでもグロい表現って興味あるよねって言ってて。エロも。

U

グロいのが好きっていうのは、なんか感情がムキ出しな感じで、ダイレクトにドーンって入ってくるような気がして。「汚っ!」とか「怖っ!」とか。

M

綺麗なものもそうやね「綺麗」「優しい」とか。

U

そう考えると表裏一体ですね。

M

ストレスになってきてるんですよ。
どっちも好きな世界でしょ?

僕も綺麗なデザイン好きだけど、なんかやり残した感がずっとあって。
昔のこと考えると俺こうじゃなかった。
ダミアン・ハーストが好きで追いかけて観てたんで、
鼻から蜂がブウワァ〜っと出てるグラフィックとかつくってたし。


自分でも分かんないけど
その活動みたいな事をどこかこの先


食・べ・な・が・ら!


上手く吐き出すタイミングが取れたらなと思ってますね。

この世代は多いと思うんです。
ストレスというか不完全燃焼な感じ?
だから、そんな人たち集めて、
みんなでガーンって何かやるのも面白いかな、


そんなアートとかデザインが3日間
大阪、神戸、福岡、広島とか日本全国で
同時多発でゲリラ的におこなわれてるとか。


TRITON GRAPHICSとして評価されてるものとは違う評価のされ方。
マスターベーションっぽいかもしれないけど。



U

7月末にダイナマイト・ブラザーズ・シンジケートの野口孝仁さんをゲストに迎え2回目の「DESIGN WORK SEMINAR」やるんですよね?
(詳細はコチラ。フライヤーも実際はシルバーなので是非手にとって見てほしいかと)

M

「らくごのご」なんです。
ああいうのがデザインで出来たら面白いなと。
マックをそのままプロジェクターにつなげて、
お客さんからお題をもらうんです。
「◯◯なデザイン出来るんですか?」
「じゃ、ちょっとやってみましょうか」みたいな。
本当にライブなんで結構ビビリますよ、
ざこばと鶴瓶はやっぱり天才だと思いましたね。
(1回目のDESIGN WORK SEMINAR様子はコチラ


初めての試みでどうなるか分からなかったんですけど、
「テクノのポスターみたいなのつくってもらえますか」ってお題で
ネットから写真素材集めてバ〜ってやって、
で次のお題は「先ほどテクノで使ったヴィジュアルを使って和なデザインやってもらえますか」って。

U

直球じゃなく変化球投げてくるんですね!

M

そう。お!きたな!って

たぶんTRITONのデザインを見たい、教えてほしいと思って来てるんで、
なんとなくその幅感できてるんだけど、
その中で、自分の好きな興味のある音楽とかを投げかけるみたいな。

U

楽しそうですね

M

すっごい大変でしたよ。
あと全部丸見えなんで、
「松岡さんんってショートッカトあまり使わないんですね」とか(笑)

U

じゃ次は僕もお客として
嫌がらせのようなお題を投げにいきます!
無理難題をどんな顔してつくるのを見るために(笑)



Relation Link
TRITON GRAPHICS http://www.triton-corp.co.jp/

Flip INDEX

ワタクシundersonがちょっと気になるアンチクショウと旨い珈琲でも飲みながら肩肘張らない丸腰放談の中からクリエイティブの薬莢を見いだす針小棒大なコーナー。

Editor/
tsutomu horiguchi
from underson

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